再生医療ベンチャーは資金調達ベタ?

再生医療ベンチャー資金調達の課題

日本の再生医療ベンチャーが直面する資金調達の現実と打開策

2025年6月 | GFファンド コラム

序章:注目される再生医療、されど資金は届かず

再生医療や細胞治療、遺伝子治療などの領域は、今や世界中の医療イノベーションの中心にあります。日本でもiPS細胞などの技術が国際的に高い評価を受け、大学発スタートアップや医療系ベンチャーの設立が相次いでいます。しかし一方で、それらの企業が次のステージへ進むために直面する「資金調達の壁」は、想像以上に高く、厚く、そして深いのが実情です。多くのスタートアップが、研究成果を商業化する前に資金ショートに陥り、市場から退場を余儀なくされています。

◆ VC視点から見た「投資されにくい構造」とは?

なぜ、日本の再生医療スタートアップには資金が集まりにくいのでしょうか? GFファンドでは、主に以下の3つの構造的な問題があると分析しています。 1. タイムラインの長さ  臨床試験やPMDA承認を経て製品化するまでに、7〜10年を要するケースが珍しくありません。これは、3〜5年でExitを目指すVCの時間軸とズレがあります。 2. 規制の不透明さと複雑さ  特に日本国内では、厚労省およびPMDAの承認プロセスが煩雑で、海外と比較しても予見性が低いという声が多く聞かれます。 3. 技術偏重と経営人材の不足  多くのスタートアップが研究者主導で設立されており、投資家が期待する「ビジネスモデルの明快さ」や「市場導入戦略」が弱い場合があります。

◆ 助成金・補助金はあるが限界も

国や自治体による助成金・補助制度(AMED、NEDOなど)も存在しますが、これはあくまで研究段階や初期フェーズの活動支援が中心であり、スケールアップのための成長資金としては物足りません。 また、補助金の取得には煩雑な申請業務が求められ、実質的には限られたリソースの中で、資金調達と並行してこなすのは極めて困難です。

◆ 打開策①:医薬系大手とのパートナーシップ

出口戦略が不透明なままでは投資判断が難しいため、製薬会社との提携やM&Aを前提とした戦略構築が有効です。 特に以下のような枠組みが注目されています: • 製薬企業との共同開発契約(Co-Development Agreement) • 大学病院や国立研究所との知財ライセンス契約 • AMED等と製薬大手の公的資金連携案件 これにより、企業としての信頼性が高まり、VC投資の障壁を下げる効果が期待できます。

◆ 打開策②:技術の“翻訳力”を高め

資金調達に成功しているスタートアップの多くが共通しているのは、「技術を投資家目線で翻訳する力」を持っていることです。 • 技術の差別化ポイント • 市場規模と事業機会の可視化 • マイルストーンの明確化(臨床フェーズ、薬事スケジュールなど) • Exit戦略の提示(M&A、IPO、Buyout) これらをスライド1〜2枚で説明できるか否かが、投資家の「最初の3分」の印象を大きく左右します。

◆ GFファンドの支援:資本だけでなく“設計図”も

GFファンドでは、単に資金を出すだけではなく、「研究者の情熱を、事業の設計図に翻訳する」そんな支援を重視しています。 ・PMDAやFDAとの接点構築 ・KOLやCROとの連携支援 ・海外LPや事業会社の巻き込み方のアドバイス これにより、国内ベンチャーが“世界と戦えるチーム”として自走できる状態に整えるのが我々の使命です。

◆ 結語:この“壁”は、越えられる

再生医療は、人類の未来を変える可能性を持つ分野です。 一方で、その道のりには幾重にもハードルが存在します。 しかし、視点を変え、戦略を磨き、適切な支援者とタッグを組めば、必ず道は開けます。 GFファンドは、そう信じる企業の背中を押し続けます。